搬入も近づいた3月11日、東北地方に発生した大地震は大きなインパクトとショックを私達に与えました。春陽会事務局では緊急に地震対策本部を立ち上げ、震災による被害地域の出品者の把握と対応、国立新美術館からの情報収集、作品取り扱い業者との連携、審査・搬入・陳列の対応に万全を期すこととし、第88回春陽を実行に移すことを決定いたしました。そして迎えた4月13日(水)、春の陽光の中『第88回春陽展』は幕を開けました。
・展示概要
審査報告から今回の出品者数・出品点数ともに、絵画部では昨年より微増、版画部では減。春陽会賞は絵画部で1名、版画部は今年も該当者無しということになりましたが、厳しく公平な審査が為された結果でした。
展示会場は国立新美術館2階2フロアを絵画部、3階1フロアを版画部とし、入り口付近にポストカードとチャリティー作品の売り場、特別展示の会場を、また会場中央付近に出品者交流の場のサロンを設けました。
展示は各部屋、新・旧会員、会友がバランスよく配置され、また受賞作品は展示室を分散させながらも数点まとめて観覧できるなど、新たなエネルギーも感じて貰い易かったのではと思います。
チャリティー作品展では作品の販売と併せ、缶バッチやエコバッグなどのチャリティーグッズの販売も行いました。会場には義援金箱を設置し、チャリティーグッズの収益金と皆様からの温かいお気持ちはすべて震災による被災者への義援金とさせていただきました。ご協力下さった皆様には感謝申し上げます。
サロンでは人が行き来し歓談の声が絶えませんでした。作品を見た後の一休みに、通りがかりに知っている顔を見つけては、ゆっくりお茶を飲みながら会話に花が咲いていたようです。
・特別展示「春陽会第三世代の作家たち・パート1」
「特別展示」では春陽会第三世代の作家たちとして五味秀夫・田中岑両氏の作品を紹介しました。戦後の日本画壇に彗星のごとく現れたお2人は、春陽会のみならず広く美術会に新風を吹き込み牽引してきた存在です。この度の展示では春陽会に出品した作品を中心に、五味氏の作品10点と、田中氏の新作を含む作品11点を展示しました。陳列ケースではモチーフやパレット、愛用の品々もご覧いただけ、壁面には「ことば」パネルを設置しました。会場を染める五味氏のブルー、田中氏のイエロー、そしてちりばめられたことばの数々に、両氏の凛とした世界観を感じていただけたのではないでしょうか。なお、来年89回の特別展示は「春陽会第三世代の作家たち・パート2」を予定しています。
・「会場研究会」と「授賞式・懇親会」
4月16日(土)は「会場研究会」と「授賞式・懇親会」が行われました。会場研究会は震災による交通機関などの影響も多少あったようですが、多くの方々に参加いただけ、講師の講評に熱心に耳を傾ける出品者の姿が見られました。5時からの「授賞式・懇親会」は今年は表参道の青山ダイヤモンドホールが会場です。授賞式に入る前に、この度の東北地方太平洋沖地震の犠牲者に出席者全員で1分間の黙祷を捧げ、続いて沓間宏理事長からもお見舞いの言葉が述べられました。沓間理事長は挨拶の中で、今回の開催を危惧する声も多くあったが、春陽会は1922年の創立以来、幾度もの困難を乗り越えながらもその精神が受け継がれ、88回の歴史の中で春陽展が開催されなかったのはただ1度であること、そして今後もその理念を貫き次代の希望ある展覧会を開催するために相応しい作家として発展して欲しい、と話されました。絵画部・版画部の審査委員長より審査報告があった後授賞式へ移り、「春陽会賞」「奨励賞」「会友賞」「中川一政賞」「岡鹿之助賞」「損保ジャパン美術財団奨励賞」の授賞者が紹介され賞が授与されると会場は大きな拍手に包まれました。損保ジャパン美術財団常務理事小口氏からは賞の授与とともに祝辞をいただきました。続いて90回展特別展示作家として、絵画部からは三浦明範、有吉宏朗、鈴木善晴、萩谷かおるの4氏が、版画部からは立堀秀明、中東剛、清水美三子の3氏が発表されました。春陽会の次代を担う旬の作家として個展形式での発表が予定されています。今年の会員推挙者は6名あり、壇上に上がった新しい仲間を田中岑氏が握手で迎えました。
田中岑氏は今年度の長老表彰者でもあります。花束を贈呈されると、ユーモアのあるご挨拶に会場は和やかに沸き立ち、90歳ならではの貫録を感じました。
最後にNHK厚生事業団事務局長篠崎氏からの祝辞と、東京ステーションギャラリー館長富田氏より新しいステーションギャラリーで開催予定の90回記念展『木村荘八展』についてお話しがあり、授賞式は終了しました。懇親会は、横山了平氏の「献杯」の声とともに静かにスタートしました。北は北海道から南は九州まで多くの出品者の出席があり、会員・会友・一般出品者が垣根を超えて交流を深めました。2次会は会場を移し、絵画部・版画部合同で行いました。こちらも多数の参加者があり、会場が居酒屋ということもあってお酒もすすみ、気楽な雰囲気の中大いに盛り上がりました。
・講演会
講演会は「成功とは何か・挫折とは何か―ある画家の生涯を考える」と題し、4月17日(日)1時30分から新国立美術館3階の講堂で開催されました。講師に美術評論家・武田厚氏をお迎えし、エコール・ド・パリの作家、特にパスキンの生涯にスポットを当ててお話しいただきました。容姿端麗、早熟で溢れる才能、華やかな成功者であったにもかかわらず堕落と絶望の生涯――、まさに作家にとって「成功」とは「挫折」とは何なのか、と考えさせられる内容でした。
第88回春陽展は4月25日(月)14時、12日間の会期を終了しました。今回の開催においては、震災によるショックと、その後の余震や計画停電、「開催できるのか」という不安の中で審査や準備を進めてきましたが、全国から出品される作家達の情熱と、搬入や運営に関わる関係者全ての尽力、会場である美術館との連携など、各人の力が集結されての開催だったことを実感しました。 (文責 HP担当・畠山昌子)
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